プラチック製ストローは便利・丈夫・安価という特徴で普及し、特に喫茶店、レストラン、ホテル、タピオカ店などでは不可欠なものだとされてきました。プラスチック製品は容易に手に入り、すぐに使い捨てられますが何百年経っても自然分解されません*1。これまで、プラチック製ストローはほとんどリサイクルできず、燃やされたり、そのまま海へ流されていました。プラスチック製ストローは製造過程および廃棄の際に石油や天然ガスなどの燃料起源で発生する二酸化炭素を排出するため、気候変動への影響を与え続けています。
近年、世界中でこの問題への関心が高まっており、解決するためにプラスチック製ストローの廃止やプラスチック製ストローの代用品などが登場しています。ストロー自体の使用禁止は完全なる解決策だと思われますが、グラスに口をつけることを好まない人や、小さな子ども、寝たきりで口から水分を補給する必要がある人など、ストローは非常に便利で欠かせないものです。
プラスチックごみの海への流出量が多いベトナム*2では、プラスチックストローの取り組みが行われています。ここではその取り組み事例について紹介します。
現在、ベトナムでは多くの飲食店で「竹製のストロー」、「ステンレス製のストロー」、「ガラス製のストロー」など洗って再利用できるストローが使用されています。さらに、環境にやさしい使い捨てストローの開発も積極的に進んでいます。以下は、使い捨てストローの3つの事例です。
【草(レピロニア)ストロー】
草ストローは主にレピロニア(Lepironia, カヤツリグサ科)から作られています。レピロニアはベトナムのロン・アン、ドン・タプ、ハ・テインなどの酸性の塩水地域で成長します。昔からレピロニアはベトナムの南部メコンデルタの人々によって収穫され、クッション、帽子、パッケージなどの編み物の手工芸品が作られています。2017年からレピロニアの太い部分はストローとして活用されるようになりました。現在、多くのベトナムの飲食店ではプラスチック製ストローを廃止し、代わりに草ストローを使用しています。また、ベトナムの国内だけではなく海外への輸出も始まりました。日本でもベトナムの草ストローが販売されています。*3
【米粉ストロー】
米粉ストローは2018年に誕生しました。ベトナムのドンタップ省にある食品会社が作っています。*4 米粉ストローの色には、白色に加えて、野菜から抽出された黒、オレンジ、緑、紫などの天然着色料を使用しており、食べても安全です。3か月以内に自然分解し、常温で約18か月間保管できます。また、常温の水と冷水に30分から120分間浸しても変化しません。さらに、米粉以外にもじゃがいも、バナナ、キャッサバなどの天然野菜のでん粉から製造されたストローもあります。野菜でん粉ストローはサラダ油で揚げたらスナックになり、お湯を注げばヌードルとして食べられます。
【紙ストロー】
紙ストローは100年以上前から作られていましたが、プラチック製ストローの使用中止により、再び使われるようになりました。短い時間で完全に自然分解でき、環境にも悪影響を与えないメリットがありますが、水を吸収しやすく、約1時間で柔らかくなってしまいます。ベトナムでは2020年3月から、Nestlé MILO会社の紙パック飲料のストローは、プラチック製から紙へ移行しています。Nestlé MILO会社のストローは、スーパーでも販売され、喫茶店などで使用されています。紙ストローのパルプは森林認証制度(FSC認証)のもので、米国に輸出する際には製品安全証明書(FDA)を取得しました。
プラチック製ストロー問題は先進国、途上国関係なく地球規模の問題です。ベトナムでの取り組みは一例にすぎず、各国でも以下のような取り組みが広がっています。
・EU理事会は、使い捨てプラスチック製品の流通を2021年までに禁止する法案を採択しました。*5
・ファストフード大手のマクドナルドは、2025年まで全世界の全店舗で、プラスチック製ストローの廃止し、紙ストローに切り替える予定です。*6
私たち、地球市民の一人としてできることは何でしょうか。環境に配慮した使い捨てエコストローまたは自分のお気に入りのストローを使ってみませんか。
*1 WWFによる海洋プラスチック問題の記事:https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/3776.html
*2 2010年の調査で、ベトナムは20カ国中4番目にゴミ流出量が多いとされている。Jambeck et al. 2015 “Plastic waste inputs from land into the ocean”, Science 347, 768-771.:https://www.iswa.org/fileadmin/user_upload/Calendar_2011_03_AMERICANA/Science-2015-Jambeck-768-71__2_.pdf
*3 日本での販売先「HAYAMIの草ストロー」:https://www.hayamigrassstraw.com/
*4 ベトナムの米紛ストローについての記事:https://vnexpress.net/san-xuat-ong-hut-bot-gao-o-mien-tay-3993656.html
*5 EU理事会による法案に関する記事:https://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2019/05/21/council-adopts-ban-on-single-use-plastics/
*6 マクドナルドによる紙ストロー切り替えに関する記事:https://news.mcdonalds.com/news-releases/news-release-details/rollout-paper-straws-uk-ireland-new-commitment
文責:Nguyen Thuy Ngan(グエン・テゥー・ガン)