ミャンマーの新たな気候変動政策

ミャンマーは著しい経済発展を遂げる一方で、気候変動をはじめとした環境問題にも直面しています。事態は深刻で、2019年の「グローバル気候リスク指標」では過去20年間で気象関連の被害の影響を最も受けた3カ国の1つとしてミャンマーが挙げられている程です。

ミャンマー社会は気候変動の影響に対して非常に脆弱であり、過去60年間で強度と頻度が増している大雨、高潮、干ばつ、洪水、サイクロン、地滑りなどの災害の影響を受けています。ミャンマーで予測される気温の上昇は、農業生産と食料安全保障に大きな悪影響を与えています。気温が高くなると、作物の収穫量が減少してしまいます。7月から10月にかけて大雨と洪水が発生していますが、特に気候変動の影響を受けているのは乾燥地帯です。

2020年7月、マンダレー(Mandalay)が大雨によって決壊し、4,000世帯ほどの合計2万人の人々が洪水の影響を受けました。災害管理省によると、この洪水により2万5,000人以上が避難しました。現在でも農村地域では度々大雨による洪水被害に見舞われています。また、2020年6月2日に大雨でミャンマーの北部にあるカチン州の鉱山で地滑りが発生した後、少なくても160人以上が死亡しました。

写真UN
Figure 1 国連開発計画

そのような、様々な環境問題があるミャンマーは国連気候変動枠組条約、京都議定書、パリ協定に合意し、将来に向けた国際的な意思決定プロセスに可能な限り参加しています。2019年にミャンマー政府は環境保全と気候変動対策のビジョンとして、国家環境政策(National Environmental Policy)とミャンマー気候変動政策(Myanmar Climate Change Policy)の2つの政策を発表しました。

国家環境政策(National Environmental Policy)では、ビジョンとして、健康でクリーンな環境包摂的な開発とミャンマーのすべての人々の幸福になることを目指しています。国家環境政策の目的は、環境保護と持続可能な開発を導き、ミャンマーのすべての政策、法律、規制、計画、戦略、プログラム、プロジェクトに環境への配慮を主流にするための環境政策の原則を確立することです。

また、ミャンマーの気候変動政策(Myanmar Climate Change Policy)では、ビジョンとして、現在および将来の世代の幸福のために、持続可能で、災害に強い、低炭素社会になることが掲げられています。この政策は、長期的な方向性とガイダンスを提供することを目的としています。政策には以下のような内容が含まれています。

  • ミャンマーの気候変動の適応と緩和に関する対策を推進する。
  • 気候変動の適応と緩和に関する事項を、国家の優先的な事項とし、すべてのレベルとセクターにわたって対策に取り組む。
  • すべての人々に利益をもたらすような、持続可能で低炭素型の気候変動に強い開発を推進する。 

さまざまな環境問題に直面していたミャンマーは、これから環境問題を意識して持続可能な社会を目指していると言えます。

References
Myanmar Climate Change Policy (2019)
https://unhabitat.org.mm/publications/myanmar-climate-change-policy-2019-eng-mya/
National Environmental Policy of Myanmar (2019)
https://www.mm.undp.org/content/myanmar/en/home/library/environment_energy/national-environmental-policy-of-myanmar.html
Global Climate Risk Index 2019
https://germanwatch.org/en/16046
Myanmar: Floods and Landslides
https://reliefweb.int/disaster/fl-2020-000172-mmr

文責:スモン・ピソン

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