リトル・サン:持続可能な未来への希望の光        

地球温暖化に対処しようとするあまりに、ついつい我慢を強いたり、頑張りを強要したりしてしまうことがあります。でも、美しいものに触れたり、可愛いものと出会ったり、そんな切っ掛けも大事なのだと思うのです。大切なことは、持続可能な未来につながるプロセスを楽しむことなのではないでしょうか。

永田研究室では、気候変動という地球規模課題に対して適切な「入り口」(エントリー・ポイント)を設けることを大事にしてきました。このプラットフォームもそうした想いのもとに立ち上げられています。学校の授業などで気候変動を学ぶときに大切なのも「入り口」。この点、教材はこの上なく重要です。

リトルサン
リトル・サン(筆者撮影)

学校でも出来るだけ生徒たちがワクワクするような「モノ」を活用するのは有効だと思います。例えば、ここで紹介する「リトル・サン」。観てよし、手にとってよし、使ってよし、デザインの背景を学んでなお良し、という良質な一品。

デザインしたのは、持続可能性をテーマに世界各地で活躍するアイスランド生まれの芸術家、オラファー・エリアソン。充電は本体の裏面を太陽光に当てるだけ。4時間の充電で5時間ほど煌煌と部屋を照らしてくれる秀逸なツールです。電気のない途上国の人々にも頼りにされている「人気者」のようです。

デザインが優れているので、名だたる美術館でも展示されたり、販売されたりしてきました。日本でもネットで1台4千円近くで入手できます。やや値は張りますが、収益の一部は送電線のない地域のアフリカ諸国の人々に「光」を届けるプロジェクトにも役立てられているようです。持続可能性と対価(コスト=犠牲!)について授業や学習会で話題にする格好の教材にもなります。

スイッチをオンにすると小さいのに力強い光を放ち、その後はどことなく優しく照らしてくれる不思議な「リトル・サン」。エリアソンはかつて次のように語りました。「未来に歩いて入っていったら歓迎された。私でいいんだっていう感じがした。」・・・こうした受容感を未来世代が持てるように、我々大人も楽しみたいと思うのです。

【引用・参考文献】
・『ときに川は橋となる(東京都現代美術館展覧会公式カタログ)』(オラファー・エリアソン、フィルムアート社、2020年)
・記事「オラファー・エリアソンの 『リトルサン』は、地球温暖化防止と世界の人々をつなぐプロジェクト」
・記事「あのオラファー・エリアソンがデザイン!途上国で活用される、太陽の形をしたかわいいLEDライト『Little Sun』」

文責:永田佳之

TAG